相場と 時価は違う

相場と 時価は違う

不動産の売り出し価格は、仲介会社など不動産のプロのアドバイスや相場価格、近隣取引事例をもとに決められます。

 

アドバイスする側はもちろん、適正な価格を見極めようとします。

 
ただし、この「相場価格」というのは、心を惑わす価格であるため注意が必要です。

 

「相場価格」で売れると、売主としては何となくほっとするかもしれません。「損をしなかった」「適正な価格で売ることができた」と嬉しくなるかもしれません。

 

しかし、この「相場価格」で売れたことを、素直に喜んでいいのでしょうか。

 

私はこの「相場価格」に常日頃から非常に疑問を持っています。

 

不動産を売る相手は一人だけです。

 

たとえば100カ所、200カ所を相手に売るなら、平均的な金額、すなわち相場価格に落ち着きそうです。

 

しかし、もしlカ所しか売らないのであれば、本当に「平均的な価格(H相場価格)」で売ることしかできないのでしょうか。

 

実際に不動産を売却する時には、国税庁が定めた「路線価格」で売るわけでも、不動産鑑定士が定めた「鑑定評価」で売るわけでも、近隣取引相場から定めた「相場価格」で売るわけでもありません。

 

その瞬間に最も高値をつけてくれる「たった一人」に売ればいいわけです。

 

わかりやすい例として、「まぐろの競り」を例にしてみましょう。

 

築地では、毎年年始に「まぐろの競り」があります。

 

2013年の築地の初競りでは、大間産のクロマグロがl億5540万円(l同あたり叩万円)で有名寿司チェーン屈に競り落とされました。

 

これまで過去最高だった2012年の5649万円(1同あたり剖万円。落札者は同じ)の実に3倍近くとなり、記録が残っている1999年以降、最高値となったようです。

 

この2013年の初競りで落札したクロマグロは、大トロで1貫あたり398円でお客さまに提供したそうですが、原価から考えれば1貫あたりl万円を軽く越えたようです。

 

すなわち、この落札価格は原価率や利益率をもとに決めたものではないようです。

 

では、このクロマグロの「相場価格」は一体いくらなのでしょうか。

 

-億5500万円前後なのでしょうか。

 

それとも2012年の落札価格である5600万円前後なのでしょうか。

 

おそらく、平均的な取引価格から算出した金額を「相場価格」とするなら、もっと安くなるはずです。

 

しかし、「時価は?」と聞かれたらいかがでしょうか。

 

この場合、実際にl億5540万円で取引された以上、「時価は1億5540万円」ということになるのではないでしょうか。

 

このように、「相場価格」は説明がしやすいですが、「時価」は説明が困難なものだと私は思っています。

 

実は、不動産にも信じがたい価格がつくことがあります。

 

詳しくは第4章でお伝えしますが、原価率や利益率を考慮すると、割に合わないはずの価格がつくことが度々起こるのです。

 

では、どんな時に、「普通に考えたら説明できないような価格」がつくのでしょうか。それを知っておくと、今後の役に立つでしょう。

 

先に答えをお伝えすると、まず挙げられるのは、駐車場や農地など、「戸建やマンションが分譲できる土地」です。

 

不動産の売買は、「心理戦」です。売却を成功させたいのであれば、買主の心理を深く読み解くことが必要となります。

 

その際に意識しておきたいのは、不動産の買主が「個人」である場合と「会社」の場合とでは、それぞれ異なった心理が働くという点です。

 

マイホームの購入など、不動産の買主が一般個人である場合、基本的には「個人の財布」からお金を出すことになります。

 

すなわち、自分の財布から毎月のローンを払っていかなければなりません。

 

マイホームは収益を生むものではなく、自分の財布の中身が減る一方です。

 

当然「少しでも安く買いたい」「無理してまでは買いたくない」というのが買主の気持ちです。

 

つまり、不動産を手に入れるためにお金を余計に出すことに対して、消極的になりがちです。

 

一方、戸建住宅やマンションが分譲できるような大きな土地の購入などは、買主が会社であることが多いです。

 

その場合、「会社の財布」をもって購入します。

 

会社のお金で買うわけですから、もちろん仕入担当者個人の財布の中身は減りません。

 

それどころか、購入した土地を分譲して収益が上がれば、担当者個人のお金は増える可能性があるのです。

 

会社からは、ボーナスが支給されるかもしれないからです。

 

購入した事業用地の上に戸建住宅やマンションなどを建てて分譲することによって、最終的には会社も利益を得ることができます。

 

つまり、会社の財布の中身も増えるわけです。

 

結局のところ、担当者や社長、役員の「個人の財布」も「会社の財布」もその中身が増えるため、お金を出すことに積極的になります。

 

もちろん、より安く買えた方がより大きな収益が生まれるため、安く買いたいのは当然です。

 

しかし買えなければ収益が上がらず、会社が倒産する可能性すらあるわけです。

 

このように「会社の財布」で買う場合には、「個人の財布」で買う場合とは別の心理が働くことになるのです。

 

また、社長や役員などの様々な思惑が働く結果として、「この不動産を絶対に買う」という状況になることがあります。たとえば、次のような場合があります。

 

「販売在庫がなくなってきたから、今回、無理してでも買いたい」
 
「今回の決算で、どうしてもあと少し売り上げが欲しい」
 
「この地域では、どうしても他社に取られたくない」

 

このような状況では、買値が相場価格を大きく上回ることがあります。

 

ところが現実には、買主が「個人の財布」で買う不動産と「会社の財布」で買う不動産を同じように売ってしまっている傾向があります。

 

何とも残念なことですが、これが日本の不動産売却の現実なのです。

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